久々すぎる投稿。どんな感じで(口調とか?)書いてたか忘れた。
以前の投稿は大学院に入る前だったはず。
全く投稿をしなかった2020年は,本の読み方と現代社会の姿が徐々にわかった一年だったと思う。
さてさて,今回のゼミで読んだのは,経済学界では超超有名なスティグリッツが2020年1月に出版した「プログレッシブキャピタリズム」である。
自分の学科の名前も英語でスッと言えないレベルで英語が苦手な私には,スティグリッツがこの本で何をおっしゃるつもりなのか題名からは全くわからん状態でスタート。
でも内容はとってもシンプルだった。翻訳もわかりやすかった。ありがとう!
この本のテーマを一言でいうと,「ごっつひどい格差社会をどないかするためには,経済政策だけではなく,政治を変えながら,資本主義の弊害と戦っていかなければならないんだぞ,わかってんのか?あぁ??わかってねーだろぉ!富裕層お前らにもいいことなんだぞ?みんな全然そんなことわかってないんだもんだから変わんねーんだよ!でも本気出せば変えられるんだからな!」です。
大げさに書いてるように見えるかもしれんが,そんなことはない。
トランプ政権が生んできた格差,過剰なお金儲けえいえいおー活動,社会の分断に対しスティグリッツが抱いている怒りが本書で垣間見れる。
指導教諭に教えてもらったんだが,スティグリッツはクリントン政権時代に行政サイドにいて,いろいろ提案したけど政治の力でゆがめられてしまった経験がたくさんあるんだろうということだった。そりゃ腹立つわ。
人々の努力によって経済学研究が発展しても,それが全く生かされない社会。
生まれた時からチャンスを与えられ,市場を独占するのに成功した者だけが政治を動かす力を持つ社会。
貧困から抜け出すチャンスすら与えられない人々。
スティグリッツも言っていたけど,人々の無力感が社会を変える力を,悪い政策の抑止力を減衰させている。
まずは,企業献金や,市場競争力を阻害する政策など悪い政策は排除すべきであるということ。同時に,選挙制度や政治家の説明責任を遂行させるための制度など,民主主義を守っていくための制度の変更が必要で,富を再配分する制度を強化させるべきだということもスティグリッツは言っている。
そうしないと,政治に対する不信感,無力感といったものは除けないし,今のままではいい方向に政治を動かすのは難しい。結局経済政策を決めるのは政治なのだから。
ところで,ゼミで議論になったのは,格差をなくすことが富裕層にとってどんなメリットがあるのか,ということだった。
これは重要な論点だと思った。だって富裕層や政治家にとっていいことがないと,社会に良いというだけでは動いてくれないから。(ほんとは政治家は社会のために動くべきなんだけどねぇ全く…)
一番説得力を感じたのは,スティグリッツの「経済成長に必要な人的資本が損なわれる」と,指導教諭の「貧困が広がると,治安が悪化するなど,富裕層のQOLにもかかわってくる問題がでてくるので,格差をなくすことは富裕層にとってもいいこと」だった。
他のゼミ生は,このスティグリッツの主張について,「そんなに人的資本が損なわれることって経済的に大きい打撃なの?」みたいなこといってたけど,指導教諭は「近年は高付加価値の産業(つまりサービス業やIT系の産業のような,肉体労働ではなく知識の必要な産業)の発展が国の経済成長を左右しているので,人的資本への投資は重要だ」といっていて,さっすが先生,そうだそうだ!ってなったよね。
この本を読んで改めて市民が政治や経済の事を理解することの難しさを感じた。
格差に関する価値観って本当にやっかい。
アメリカにはびこる「アメリカンドリーム」の価値観に対し,経済学者はエビデンスをもって人々の認識を変えていくことができるか試されているように思う。
この本わかりやすいし,「私ら働いてお金もらってるのに生活保護でお金もらってる人許せない」的なこと言ってる人に読んでほしい。まじで。