頑固系OLのおっとりな本棚

頑固な思考から解放してくれるような本との出会いをマイペースに紹介

地方は地方の強みを活かすべし「地方の論理」

最近、就職活動をしていてなんて時間がかかるんだ、なんて機械的な作業が多いんだとぐちぐちモードである。

 

マイナンバーに成績を登録するだのだの言ってる人いたけど、そのマイナンバーの登録情報に基づいていい就職先にすばやく面接に繋げてくれるサービスとか始めてくれるのであればまだしも、そうじゃないならそんな駄策は口にするのもやめてほしいものだ。

 

インターンは1社しか行っていないが、こんなに勉強になるとは正直思っていなかった。

たとえ表向きだとしても、自分の仕事が社会にどう貢献しているかを説明できるって、やっぱり社会人はすごい。

 

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最近読書が停滞気味であるが、久々に新書を読んだので少しまとめておくこととする。

北海道を中心に地域活性化に取り組んできた小磯氏の「地方の論理」だ。

 

地方の論理 (岩波新書)

地方の論理 (岩波新書)

 

 

「地方の論理」って最初どういう意味なのかさっぱり分からなかったが、大きな趣旨としては、地方では地方の強みをいかす、中央とは異なる地方の特性を活かした独自路線で日本を支えていくんだ、という論理だったと思う。

 

 

いろいろな分野のいろいろな事例が盛りだくさんで軸が見えにくい著作だったとは思うが、ポイントをいくつかピックアップすると以下のようであろう。

 

①辺境の強みを活かす。

②平常時と非常時、どちらでも力を発揮できる事業を。

③小さな力を結集し、その地域のならではの方法で地域の危機に立ち向かう。

 

①~③は、それぞれ独立したものではなく、互いにかかわりがある。

 

例えば、東京だけに事務所が立っているよりも、辺境である北海道などに支所があった方が、非常時でも業務が継続しやすい。

 

道の駅は地域活性化の拠点になるだけでなく、非常時には避難所になる。

 

以前からこのような取り組みをする企業や自治体はあったとは思うが、その共通項がうまく見出されており、合理的でかつ時代に合う形で提案がされている点は、まさに「論理」という言葉がぴったりである。

 

この本の特に面白かったところは、グローバル課題や国際政治的な問題について、地方からの視点で取り組むことができるという示唆が含まれているところだ。

 

一番驚いたのが、北方領土問題について書かれたところだ。

 

北方領土問題なんて、国、しかも首相クラスの人が主体となって取り組むイメージしかない。

 

しかし、北方領土に近い地域では、以前から北方領土に住むロシア人との間で住民レベルで交流が行われ、長い時間をかけて信頼関係を育んできたというのだ。

 

そこで、著者は、フィンランドスウェーデンの間にあるオーランド諸島が、両国の制度をうまく取り入れ、自治権を獲得しながら独自の文化を形成してきた事例を北方領土問題と重ね合わせ、北海道の住民と北方領土に住む人々が共生しながら独自の地域をつくっていく方向での領土問題解決策を提案している。

 

両地域の人々が作り上げてきたコミュニティは、間違いなく地域の大事な資源である。政府は活かすべきだし、せめてその資源を台無しにするような政策が行われないことを願うばかりだ。

 

こうした地域の可能性について、これまで本州の人々が知る機会が少なかったということは、地方の役割やポテンシャルがいかに軽視されてきたかということの現れだと思う。

ここまでくると国がやるべきことだ、国しかできないのだ、という考えは、地域に対するある種の偏見なんだろうなと感じる。

 

 

他にも、由比の桜エビの資源管理をはじめとする「コモンズ」に関する事例はどれも興味深かった。コモンズって最近流行ってるだけあって、その概念は比較的多くの人に受け入れられるんじゃないかなと思った。

コモンズ概念に基づく資源管理の実施には時間がかかるし、合意形成のわずらわしさもあるが、そのプロセスこそが地域のポテンシャルを高めていくのだろうと思う。

これ研究テーマにしたいなぁ。

 

研究も、地域から国政に影響を広げられるようなものがいいかもしれないな。