頑固系OLのおっとりな本棚

頑固な思考から解放してくれるような本との出会いをマイペースに紹介

『問いのデザイン―創造的対話のファシリテーション』

最近ファシリテーションをする機会があったので迷ったがこの本を読んでみた。

特に「問いの立て方」を深堀しつつプログラムの立て方全体が網羅的にカバーされていて、これまで読んだファシリテーション関連の本の中でも満足度が高かったし、今すぐ実践したくなったので紹介。

ファシリテーションだけでなく、会議や自分の思考をめぐらすときにも役に立つ内容。

◆問いかけ方で固定化された認識と関係性をほぐし、創造的な会議・ワークショップに

Appleが「スマホに説明書は要らない」という新たなアイデアスマホを幅広い層に普及させたように、ビジネスで勝っていくには自分たちの考えや当たり前となっている価値観の前提を疑い、他にはない課題解決を模索しなければならない。

しかし、同じ会社で働いていても人によって課題の見え方は異なってくるので、解決すべきことも異なっていることが往々にある。また、疑うべき前提に気づいていても、「あの人に言ってもしょうがないしな…」といったチーム員の関係性上の問題で、根本的な解決に向かないこともある。

そこで、お互いの前提や価値観を共有し、そこから共通の意味を見出していく対話の場を通じて、新たな価値観や関係性を作っていくことが重要である。

 

◆問いの立て方を意識することで参加者の感情や思考を揺さぶる

固定化された認識と関係性を解きほぐし、創造的なコミュニケーションの場を作るには「問いのデザイン」、つまりどのような問いをどのような順番・タイミングで投げかけるかがカギだと筆者はいう。

なぜ問いにフォーカスするのか。例えば、「居心地の良いカフェとは?」という問いかけよりも、「危険だけど居心地のいいカフェとは?」という問いの方が、いつもと違う思考回路でワクワクしながら取り組むことができる。

このように、問いは人々の感情や思考を左右するものであり、逆に言えば問いをデザインすることで参加者の価値観の前提に揺さぶりをかけ、新たな発想やワークへのやる気を引き出すことが可能ということだ。

関係性をフラットにする工夫もできる。こちらが答えを用意したうえで質問するのではなく、対話の中で出てきた素朴な疑問をファシリテーターから「あれ?これって…」とぶつける方が、予期せぬ答えからファシリテーター側も学ぶことが出てくるなど、学びあえる関係性を築くことができる。

 

◆これまでのHow to本では気づかなかった問いの重要性

こういったファシリテーション上の問いの立て方については盲点だったと思う。ファシリテーションの経験がある人の中には、認識や関係の固定化については理解していたものの問いに落とし込んでおらず、ただ参加者に「前提を疑っていきましょう」「フラットに、リラックスして意見交換しましょう」と‘’意識づけ‘’するだけで問いで促すことはしていない人も結構いるのではないかなと思う。ファシリテーションはその名の通り、司会進行とは違って促すことが大事なのだから当たり前でもあるのだが、問いに注目することで促し方がかなりクリアになる。

例えば、グループワークであまり発言していない人がいたら「●●さんご意見ありますか?」という聞き方が一般的だと思うが、これだとただの司会進行である。なんでこの人は発言できていないのか、どんな質問だったら答えやすくなるか、積極的に参加してもらえるか、と相手の立場で考えて具体的な質問をしなければならない。ワークの内容に納得していないかもしれないし、ただ問いが難しいだけかもしれない。そこを柔軟に問いでフォローできるかどうかがファシリテーターの腕の見せ所といえる。

 

◆この本を活かすには練習が必要

この本は課題設定のところからWSのワーク内容の設計、本番の対応まで問いの立て方にフォーカスしつつ解説されている。どれもかなり実用的なフレームワークになっていてすぐに実践できそうである。ただし、かなりポイントが多いので様々な機会で何度も実践を通して練習しなければ習得できないと思う。まずは自身の目標立てだったり、チームとの会話の中で実践しつつ、ワークショップの開催時にもこの本通りに進めるようにしたいと思う。