虚無×やる気に満ち溢れる×何もやることがない=はてなブログ
という感じで4か月に1回ぐらいはてなブログを覗きに来ては積読本を読む気力を取り戻している。
もう3か月くらい前になるが、今更『シン・二ホン』を読んでよかったから書き留めておきたい。
でももう全部忘れたから要点だけ読み直す羽目に。
著者の問題意識にグサリとやられっぱなし
将来予測を含む本って根拠が足らんように感じることもあるけど、著者の予測は予測というよりは、
もう技術的には確実にできるんだけど、人々の認識や制度がまだそれらの可能性を把握しきれていないし活用しきれてもいなくて、でも将来はもっとそれに多くの人が気づいて、データやAIの活用は当たり前になっていく
的な論調だったのであまり疑うところもなかった。まあそうなんだろうなという感じ。
この本は特段新しいことを言っているというわけではないと思うのだが、これからの社会やそれに必要な能力について真面目に考えて仕事をしている人はほとんどいないというメッセージには多くの人がギクリとしたのでは。
「データ×AIの世界ではすべての変化が指数関数的に起きる。」
「米国をのぞく主要国は、(中略)生産年齢人口は軒並み頭打ち、もしくは減少局面にある。(中略)すでにシェアの大きな企業にとってはこのマクロトレンドは負に働く。一方、まだ伸びしろの大きなスタートアップにとってはこれらのトレンドはほとんど影響しない」
「本当に技術だけを身につけたら未来は生み出せるのだろうか。(中略)未来は我々の課題意識、もしくは夢を何らかの技・技術で解き、それをデザインでパッケージングしたものと言える。(中略)こんな課題を解きたい、こんな世界を生み出したい、そういう気持ちなしで、手なり以外の未来など生まれる理由がない。」
ちなみにこれでまだ50ページくらい…すでに腹8分目な感じもするが、まだまだ続く。
なんかムカついてきた…
2章の日本の生産性や格差に関するデータは他の本でも同様に取り上げられているのを見る。だいたいは、いかに日本が衰退してきたか、どれほど危機的状況なのかを示すのに使われることが多い。
著者はこれらを「伸びしろ」と表現し「日本の大半の産業はやるべきことをやっていないだけ」とも言っている。この本には将来の日本のあるべき姿と現状とのギャップだけでなく、日本の可能性がこれでもかというほど詰め込まれている。
とはいえ、著者が示す人材活用がうまくいっていない&人材不足の深刻さといったらもう大変なもので、途中から自分の能力不足に落胆すると同時に教育改革を怠ってきた大人たちへの怒りがわいてきて、反抗期時代に味わった複雑怪奇な気持ちを思い出させてくれる。
残念なことに、「高等教育を受けたはずの人が基本的なサバイバルスキルを身に着けていない」で挙げられていた新卒に必要なスキルを私は何一つ具備していない。多くの大学生はそれらのスキルをエンジニアだけが持っていればいいものと思っているのではないか。でも今から数学を勉強しろと言われましても(;´・ω・)←ゆとり世代
知覚を育てるには不利な時代では?
著者の主眼はAI×データによる日本の課題解決であるが、分析対象は企業の生産性にとどまらず、ジェンダー、教育格差、市民リテラシーなど、公共政策的なトピックを網羅している。これが他のビジネス書や経済解説の本より一歩踏み込んでいる部分で面白い。
脳科学に精通している著者だからこそ深堀できるところなのだと思うが、今後より高い付加価値を生み出すキーとしてデザイン力、美しさを知覚する力とデータ分析を問題解決につなげていく力(この表現は的確でないので本を読んでほしい)の大事さも随所で訴えている。著者が教育格差に注目するのは、この知覚を育てる必要があるという問題意識からだろうと思う。
ただ個人的には、時代の指数関数的な変化に伴って知覚は育ちにくくなっているのではないかと思う。例えば最近の子はYouTubeを2倍速でみたり(他人事のように言ったが私もそうだ)、曲の前奏を飛ばしたりするらしい。データ化が進むほど、美しいものをじっくり楽しもうとする、美しいものを美しいものだと知ろうとするといった環境が失いつつあると思うのは私だけだろうか。
著者はデータ×AI時代だからこそ、人だからこそできるものに価値が出てくるといっているが、今後の若者はその価値をちゃんと価値として認識するだろうか…私も自信ないんやけど(笑)だって今新卒1年目の私ですら、スマホを持ち出したのは高校生の時。生まれたときからスマホがある世代とは価値観が違って当然。
そういう意味で、教育上スローな世界がどこかに必要だとすれば、都会育ちと田舎育ちの人とで知覚レベルの違いがあるかどうかが注目されたりして。そういえば都会の子向けの「スマホから1か月離れて田舎で生活しようプロジェクト」みたいなのがあるって聞いたことあるな。
著者の地域の捉え方が???
5章までは具体的で客観的な視点で原因分析と解決策が提示されていてよかったのだが、6章からの「風の谷」の話はなんだかよくわからなかった。いったいどういう事例の地域づくりをインプットしてそれらの効果をどう評価したらその解決策に至るのか…
特に、地域を一からつくるというニュアンスが強い割には、歴史も大事とか言っているところとか…(私が著者のニュアンスをうまく取れていない可能性もあるが)間違いなく今の地域の人たちが地域の色をつくっている。歴史もしかり。それを著者はどうとらえているのだろうか。
こんなところでしょうか。全体を通してとても背中を押されるというか、こんなことできるような人になりたいなというビジョンはいろいろ浮かんだ。新卒1年目というタイミングで読んだのは我ながら正解だったのでは。本のブームはとっくに過ぎてたけど。