頑固系OLのおっとりな本棚

頑固な思考から解放してくれるような本との出会いをマイペースに紹介

有事における政策決定はどのように行われるべきか

中国人留学生が教えてくれたのだが、 中国語で「民主主義」は大統領令のことを指すそうだ。(なんでw)

 

あれ?中国に大統領…?

 

そう、どうやら中国の国家主席を英語にするとPresidentになるらしい。

 

しかし、国家主席と大統領ではその選出のプロセスが全く異なるため、昨年の8月に米議会から“中国の国家主席のことをPresidentと呼ぶのを禁止する法案”が提出されたそうだ。

気持ちはわかる。

 

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さて、今回のゼミで読んだ本は宇野重規氏の「民主主義とは何か」。

 

民主主義とは何か (講談社現代新書)

民主主義とは何か (講談社現代新書)

 

 

新書なので1000円くらいで買えて、民主主義の歴史と議論がわかりやすく、ぎっしりと書かれており、かつ賛否バランスよく学ぶことができる。
コスパ最強、素晴らしすぎる。

高校生の時に読みたかった。

 

以前、「持続可能な未来のための民主主義」を読んで議論をしたときに、専門家が政治を牽引すべきという意見を出したゼミ生がいた。

 

そのゼミ生は、今回の本を読んで、市民の参加の重要性は理解できたものの、やはり非常事態の際にはトップダウンでの迅速な政策決定が必要ではないかと考えたそうだ。

 

この反論として、大まかに分けると2つの意見が出た。

  1. 民主主義のプロセスを踏まずに政策決定を行うと、1度ミスをしたときに軌道修正が効かない。
  2. 非常事態への対処において、トップダウン型だから成功しやすいとは言い切れない。また、民主主義プロセスを採用し、成功をする場合もある。

 

1については、独断による政策の失敗は、国が滅亡するまでその方針が変わらない、なんてことが起こることが多く、注意が必要だ。
日本の第二次世界大戦への参戦がわかりやすい例だ。

 

2については、実際歴史を振り返ると、独裁政権下で決められた政策などはことごとく失敗していることから想像に難くない。
また、コロナ禍においても、中国やベトナムトップダウン方式が一部メディアで賞賛されているが、両国の感染対策の成功がトップダウン方式に由来するとは言い切れない。

反対に、韓国や台湾は、民主主義的プロセスを重視しつつ、感染拡大を食い止めることができている。

 

本の中でも、緊急時における民主主義の軽視は長期的に見ればよい結果をもたらさないと言及されている。

緊急事態をきっかけに民主主義に対する否定的なイメージが広がってしまうかもしれない。

 

政府と市民の信頼関係は民主主義の実現にとって欠かせない。

 

人々は、自分の意見を聴いてもらえる、参加することに意義を見出せる、政府は市民のために尽くしてくれる、と感じられるからこそ、多少の負担に耐えてでも参加してくれるようになるのだ。

 

緊急事態でその信頼関係が壊れるようなことがあってはならない。

 

 

この政治への信頼に関して、宇野氏は、政策の結果に対する責任を負うシステムが民主主義にとって不可欠だと述べている。

 

では、誰がどのようにして責任を負うのだろうか。

 

政治家や議員を選ぶのは市民である。また、政治家が提案した案について会議を重ね、採用するかどうかを決めるのは議会である。

 

そこで、議会の責任が問われるべきだと先生が言っていた。

なるほど。

 

 

さらに、議会や行政が政策の結果について分析し、情報を公開することが今の日本にとって重要だということも指摘してくれた。

 

つまり、市民は行政などが公表したデータに基づき、適切な政策が行われているか判断したうえで、政治家や議員を選ぶ。そして、議員らは市民の声をしっかり受け止め、議論を交わし、政策を決定する。

 

このような流れが繰り返されると、政治と市民の間に信頼関係が生まれる。

市民の政治参加への動機が高まる。

 

また、市民の政治について判断できる知識や能力を培うことが可能になる。

 

こうして成熟した民主主義国家をつくりあげることが、緊急事態においても市民が納得できる柔軟な政策を実行することにつながるのだろう。

 

 

とにかく政策の結果について公表することだ。簡単なことじゃないか。