頑固系OLのおっとりな本棚

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耕作放棄地ってきれいにしなきゃだめ?

amazon Audible(聴く読書)が時間の有効活用にもってこいで、寝る前や家事をするときによく聞いている。

 

寝る前はスリープタイマーを付けることができるのが便利。だいたいは私が寝付く前に終わってしまうんだけど。

 

今は寝る前に「サピエンス全史」を聴いているんやけど、昔は家畜の豚をコントロールするために鼻を削いだだの、ハムラビ法典では重罪を犯した者は本人ではなくその子どもが死刑になるという罰を受けるだの、気分が悪くなる話ばかりで寝られなくなりそうだ。

 

あと、もっと学術的な本もそろえてほしい。小説とか自己啓発本はあんまり好きやない。

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 今日は、1か月ほど研究を進めてみて考えたことを書き留めることにする。

 

問題意識の出発点は阿蘇の「野焼きボランティア」の事例について知ったことだった。

美しい草原を守るため、全国各地からボランティアが集まり、野焼きを行うこの行事。

数千人の関係人口が創出されている。

 

他にも、世界農業遺産に登録されている四国の田園では、その風景を売りに関係人口を増やしたり、女性など地域の多様な人材が協力して特産品をつくるなどの活動で地域を盛り上げている。

 

景観を守ろうという活動は、環境面から見てもメリットが大きいし、人口減少に直面する地域が関係人口と交流することで新たな地域づくりの形を模索できる。そうして地域に誇りが取り戻される。

 

景観の重要性を確認するとともに、人口減少下で少しでも耕作放棄地を減らし、きれいな農地が広がる地域を見た外部の人々が地域を気に入ってくれる、そして地域づくりの担い手が増えて、景観が守られていく。そんな好循環が生まれてほしい。

 

そのために、人手不足の中でも耕作放棄地を少しずつ減らしていける方法は何か、と考えたときに、放牧が思い浮かんだ。

 

3年前に放牧農家に取材した際、放牧のすばらしさについていろいろ教えていただいた。省力化には大いに貢献できる方法だ。感動する一方で、それを支える地域の人々の視線はすこし冷ややかであることも同時に感じた。

 

放牧がもっと地域全体でその有効性が認識されたらいいのに。

 

そう思って、放牧の動向などを調べていた。

放牧自体はお金がかからないし、経済支援策は十分そうに思うが、全然広まっていない。

こんなに支援があるのに広まっていないのはなぜか。

 

まてよ

 

そもそも耕作放棄地対策は各地でされているし、経済支援策自体も十分にされている。

耕作放棄地をきれいにする業者によるビジネスがたくさん生まれていてもおかしくない。

 

なんでこんなにも耕作放棄地が増えているのか。

 

農水省のデータでは、担い手がいないことが耕作放棄地発生の原因の40%を超えていた。

これを安易に信じてしまったことで、放牧に注目する羽目になっていたのだが、実は耕作放棄地問題の構造的な問題は、人口減少や高齢化だけではなかった。

 

実際は、条件不利地、つまりあまり収量が見込めない土地が耕作放棄地になっていっているというのだ。

 

でも、その条件不利地でもともと誰かが耕作をしていたわけで、本当はできるんじゃないのか、と思ってしまう。

しかし、昔と事情が違うのは、農産物の価格である。

 

昔は条件不利地で少量しか収穫できなくても、農産物価格が十分に高かったため、何とか食べていけていた。

しかし、現在では農産物価格が下がりすぎており、条件不利地での農業は厳しさを増したのである。しかも、条件不利地であるほど獣害がひどいというのだ。

 

安易に統計データを信じちゃいかんな。

 

そうなると、この研究の方向性自体が揺らいでくるではないか。

条件不利地を公益のために無理に農地として活用させようなんて、一経営者としての農家に失礼な話である。

 

必要なのは、使える農地なのかどうか判断し、使えないものは自然に返す、そして、使えそうな耕作放棄地を計画的に整備していくこと、ということになる。

つまり、地域の縮充を目指す形だ。

 

また、農地の多面的機能などの公益的なメリットから農地の保全を行うとすれば、それはその地域の人たちがやるだけでなく、その恩恵を享受する都市の人たちを動員するようなスキームが必要である。

 

ここで、最初の問題意識と照らし合わせると、2つの疑問が思い浮かぶ。

 

①自然に返すというが、それでも結局は手入れが必要になってくるのではないか。

例えば荒廃した森林のようになって多面的機能が失われたり、景観が乱れたりといった影響がうまれるのではないか。

 

耕作放棄地はどのように分布しているのか

森林に近い側から徐々に耕作放棄地が広がっていくような形になっているのか、条件不利地がまとまって存在しているのか、それともスポンジのようにポコポコと生まれてしまうのか。

 

これらは今後調べていきたい。

 

先生から言われたことで印象的だったのは、

 

耕作放棄地問題が言われて久しいにもかかわらず、また様々な取り組みが試されているにもかかわらず減らないということであれば、悪循環をもたらす構造的な問題を断ち切らなければならない。

②研究に行き詰っているのであれば、事例から入っていくのも一つの方法だ。特に、成功しているわけではないが、大変興味深く、分析する価値のありそうな取り組みについて、再評価する形で論文を書くのも面白い。そこにオリジナリティを見いだせる。

③研究は、既存研究の模倣から入るor事例から入る の二つがある。

 

②に関しては放牧がバッチリ当てはまってますけどネ…

と思いつつ。しょうがないからゼロから出直します。